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『スキの手前』

あの時、あの人に助けられてから私は時々…ほんの少しだけあの人の事を考えるようになった。

ナルシストで自信家で嘘つきで…
だけど、すごく優しくて、頼りになって……


また会いたいなんて…この感情は一体なんなんだろうか……。


スキの手前


「時音、時音ってばぁ〜…」
「え?…あ、何??」
授業もホームルームも終わり、自分の席でぼーっとしていた時音に彼女の親友であるまどかが話しかけてくる。
「何ってHR終わったよ?」
「あ……」
辺りを見渡し、クラスメイトが各々に帰っていく様に気づいた時音は慌てて帰る支度をする。
「ご、ごめんっ!すぐ帰る用意するから…」
そんな彼女の様子にまどかは小さくため息を吐くと、じっと彼女の顔を見つめる。
「な、なに?」
「……なんか最近ずっと変。どうしたの時音?もしかしてまた良守君となんかあったの??」
「べっ別に…あいつとは何もないわよっ…」
「”あいつとは”…ねぇ…」
時音の発言にまどかはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる。
「一体、何処の誰と何があったのぉ?」
「なっ?!だ、だから別に何もっ……」
「本当に?」
「ほ、本当よっ!」
じっと見合って相手の様子を伺っていると、まどかはふっと笑みを浮かべて時音の肩を軽く叩いた。
「ま、時音が言いたくないんならそういう事にしといてあげるよ。」
「……まどか?」
「でも言えるようになったら言ってよ?いつでも時音の力になるからさっ!」
「……有難う。」
「さ、早く帰ろうっ!」
「うんっ!!」

校舎を出た二人はゆっくりと歩きながら学校の授業の話や、クラスメイトの話など、いつもと変わりなく他愛ない話をする。
暫くして分かれ道に差し掛かり、二人は立ち止まって互いの顔を見あって別れを切り出す。
「んじゃ、また明日ねっ!」
「うんっ、バイバイっ!!」
時音はまどかに別れを告げてとぼとぼと一人で歩き出した。

(……私、一体どうしちゃったんだろう……)

まどかや他の人達と話してる時はなんともないのに、なのに一人になるとずっとあの時の事を思い出してしまう。
あの人が私の家に私を迎えに来た事。
断頭島であの人に助けられたこと。
あの人のお姉さんが神佑地狩りに遭ってしまって自殺してしまったと聞かされた時の事。

あの人が…


あの人が……。

「お嬢さん、少しお尋ねしたい事があるんだけど……」
「あ、はいっ…」
俯き加減に歩いている時音の頭上に誰かが声をかけてくる。
それに気づいた時音はばっと顔を上げ、その人物を見ると大きな目を更に大きくして、目の前に立っている人物を見張った。
「この辺りに烏森学園があると伺ったんだけどここからどのくらいかかるかな?」
「……っ?!」
目が合うとその人物はくいっと眼鏡を手で引きあげて、時音に笑いかける。
「……元気にしてたかい?お姫様。」
「………夕上、さん?……」
(…なんで?……どうしてここにあの人がいるの??)
暫く彼を見つめたまま時音が固まっていると夕上は彼女の顔の前で手をひらひらとさせる。
「おーい…大丈夫かい?それともボクに見惚れてしまったのかな?」
意地の悪い笑みを浮かべながら言うと時音は顔を赤らめて目を吊り上げる。
「ちっ違いますっ!そ、それよりも、どうしてこんなところにいるんですか?!烏森学園って…一体何の用でっ……」
「キミに……キミに会いに来たんだよ。雪村時音サン…」
「なっ…?!」
彼の言葉に時音は更に顔を赤らめて口元を手で覆い隠す。
(この人は…一体何を言ってるんだろう……)


私に会いにきた?
なんで?
どうして?

一体何の用で私に……?


胸を高鳴らし、目をキョロキョロさせている時音を暫く黙って見つめているとふっと笑みを溢して彼女の額を小突く。
「……なーんてね。この辺りで仕事があったからそのついでにキミがどうしてるか気になってココに寄ったんだ。」
「えっ?」
「元気そうで良かったよ。あれから何も変わりない?」
「あ、…はい。……夜には烏森に妖は出てきますけど、特にこれといった変わった事はないです。」
夕上の言葉に少し残念そうな声を出して淡々と答えると夕上は目を細める。
「夕上さんこそ…神佑地狩りの事、何か分かりましたか?」
「…………………」
「…夕上さん?」
「……いや、こっちも特にコレといって変わった事もないし、情報も今のところはないよ。」
「………そうですか…」
「けど、少しずつ色んな事分かりそうなんだ。今日だってその事で断頭島からココにも足を運んだしね。」
「本当ですか?」
「あぁ。詳しい事が分かったらキミやキミの王子様に連絡するよ。」
「おっ、王子って…良守はそんなんじゃないですっ!」
「キミがそういう風に思ってなくても彼は君にゾッコンなんじゃないかい?あんなに必死でキミの事を助けようとしていたし……」
「それでもっ!…それでも私にとって良守は弟みたいなもので、本当に、そんなんじゃっ…」
自分でも気づかないくらいに必死になって否定している時音の表情に夕上は少し嬉しそうに笑ってふっと目を伏せた。
「……………それって、ワカメ王子にもお姫様奪還のチャンスがあるって事だね。」
「……え?」
「なんでもないよ。さて、キミの元気な姿も見れたし、ボクは断頭島に戻るよ。そうだ、携帯持ってる?」
「い、いえ…」
「今時の女子高生が携帯持ってないなんて珍しいね。それじゃあボクから君に連絡を取りづらいな。」
「…夕上さん??」
「とりあえず、コレ、渡しておくよ。何かあったら連絡して……」
そう言うと夕上は小さなメモ用紙を時音に手渡す。
そこには不規則な数字が並んでいて、それを目にするなり、時音はじっと彼を見つめた。
「じゃあね。」
視線が合うと夕上は彼女に背を向けてゆっくりと歩き去っていく。
時音は何が起こったかよく分からず、彼の背中が見えなくなるまでぼーっと彼の背中を見送ったのだ。


断頭島で別れを告げたあの日から、私はあの人の事を考えるようになった。
…また、会いたいと思うようになった。


そして今日、…私はあの人と再会した。

あの人と目が合った時、
あの人が私に会いにきたと言ってくれた時、

すごく…凄く胸がドキドキして、体が熱くなったの。

(…この気持ちは…一体なんなんだろう…)

「…夕上、さん……」

先程まで自分と話していた男の名前を呟き、受け取ってメモを切なげに握り締めて時音は小さく、小さく彼の名前を呟いたのだった。


★管理人コメント★
あさ姫さんの作品でした!!
他の作品はあさ姫さんのHPでごらんいただけますvv

素敵な作品ですね!!気になる存在=夕上さんにいきなり声をかけられるこのシチュエーション!!!萌えです!!
「少し残念そうな声を出」す時音ちゃん!!可愛い〜!!もぅ!罪な男=プリンスワカメなんだからっ!!(笑)
ナガツキ今日は興奮で寝られそうにないです(笑)