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『キミのヒトミ』

 

ボクの名を叫ぶように呼ぶ高い声。
その声の主にボクは微笑みかける。


あぁ…キミの今にも泣き出しそうな顔はどうしてそんなにも綺麗なのだろう。

キミのヒトミ


烏森でのいつもの夜。
ただ、そこにはいつもは居るはずのない男が調査にやってきていた。
その男がやってきたのは烏森を守護する一人の少女、雪村時音の自宅に一本の電話が鳴り響いた時の事。


「時音、裏会の方からお電話よ。」
「…裏会?…」

いつもと変わらず穏やかな表情を浮かべた母から受け取った受話器。
おそるおそる声を出すと、先日、烏森の街で会った男の声がして、なんとも言えない表情を浮かべた。

『久しぶりだね。あれから元気してる?』
「ゆ、夕上さんっ?!」
『せっかく連絡先を渡したのに一向に連絡が来ないからこっちから電話しちゃったじゃないか…』
「な、何言ってるんですかっ!夕上さんが何かあったら連絡して来いって言ったから連絡しなかったんですっ!」
『ようするに、何もなかったって事だね。』
ムキになって反論する時音の声に笑いが混じった声で返答をする。
その声が余計に彼女のカンに触り、時音は電話越しに目を吊り上げて受話器をゆっくり耳から遠ざける。
「……用がないのなら切りますよ。」
『今晩、烏森に調査に行くから。』
「は?」
(今、なんて??)
遠ざけた受話器から信じられない言葉が発せられて、時音はそのまま身体を硬直させてしまう。
『烏森に関する気になる報告が入ってね。午後11時半過ぎにそちらに着くようにするよ。あ、もう一人の結界師クンにもそう伝えておいて。じゃ、また夜に…』
「ちょ、ゆ、夕上さんっ!?」

男はそれだけを告げると電話を切り、繋がらなくなった電話を見つめ、時音は深々とため息を吐いたのだ。

「…どうして急に来るなんて言うのよ………」

小さく呟く時音の顔は少し赤らんでいて、何処か嬉しそうだった。


そしてその夜、男は時間ぴったりに他の裏会の人間と共に烏森にやってきた。
男の姿に時音と共に烏森を守護する墨村良守は少し不機嫌になり、乱暴に小さな妖たちを退治していく。
時音はというと、どこか心ここにあらずで、男を意識し、あまり仕事に身が入らない。


そんな時に大きな妖が時音に突然襲いかかってきた。


いつもならすぐに気づく気配。
それが気づけずに、時音は妖の攻撃をよけ切れず、咄嗟に男が彼女を庇う。

流れる大量の血液。
それを見て傍に居た良守が瞬時に妖を滅し、周りに居た裏会のメンバーが男に駆け寄る。


「夕上さんっ!夕上さんっ!!」


今にも泣き出しそうな顔を浮かべて、彼を見つめる時音。
そんな彼女の頬に手を伸ばし、男はふっと笑みを浮かべる。

「油断大敵だよ?……それに、そんな顔しなくったってボクは丈夫だって言っただろ?」
「………へ?」

だらだらと血を流しながら男は平然と立ち上がる。

「ボクの能力、忘れたのかな?」

流れ出ている血が形状を変えていく。

「夕上さんの能力は血液を自由に操る事が出来るんでしたね。」
「えっ?あ、アンタ…んな事出来るのかよ?!」
「まぁね。怪我なかったかい?」
「そ、そうだっ!時音っ、怪我してねぇか?」

男の言葉に彼女の幼馴染が顔を上げて心配そうに彼女を見つめる。
だが、その表情は良守が思っていたものではなく、目を吊り上げて怒りをあらわにしているものだった。

「いくら丈夫でも私を庇うなんてしないで下さいっ!!」
「……庇われたくなければ油断なんてしない事だね。」
「っ?!」
「もっと強くなるんだ。そうすればボクなんかが手を出すことはないだろう?」

冷たく言い放つ男の言葉に時音は目に溜めていた涙を一筋零し、それを手の甲でぐっと拭い、スタスタとその場を歩き去ってしまう。

「そんな言い方しなくったっていいだろっ?!」
「…ボクを怒るより、キミは先に彼女を追いかけた方がいいんじゃないのかい?ほら、ほーよーりょく。」
「わっ、わーってるよっ!待てよ、時音ぇっ!!」

慌てて彼女を追いかける良守を見て男はふっと笑みを浮かべる。
(……駄目だな。……彼女に優しくしたいのに、それが裏目に出てしまうなんて……)

「夕上さん、一応救護班呼びますね。いくら血液が呪力の依所で身体が丈夫だといってもその傷じゃあまともに動けないでしょう?」
「あぁ…すまないがお願いするよ。」
「……全く…あまり無茶をなさらないで下さいよ?」
「…今後は気をつけるよ。」

(キミはそんなボクを嫌うかな?…)

それはそれで仕方ない。
キミには素敵な王子様がすぐ傍にいるんだから。


だけど、ボクは……。


「……犯罪。…かな。」
「…?…何かおっしゃいました?」
「いや…なんでもないよ。」

男は自嘲するかのように口角を引き上げ、クセのある髪を血の付いた手で乱暴にかき上げたのだ。


傷ついたボクを見つめるキミの瞳。
その瞳はボクだけを映している。
それに満足するボクは相当キミに熱を上げているんだ。


キミは気づかない。
気づかなくていい。

この感情は、ボクだけのモノなのだから……。


★管理人コメント★
あさ姫さんの作品でした!!
他の作品はあさ姫さんのHPでごらんいただけますvv

素敵な作品ですね!私も時音ちゃんに見つめられたい!!!萌えです!!
それに対し、切ないですねぇ〜v大人の男でいようとする夕上さんは!!
ナガツキ今日は切なくてで寝られそうにないです(笑)